[留意]A101 療養病棟入院基本料

A101 療養病棟入院基本料
(1) 療養病棟入院基本料は、「注1」の入院料及び「注2」の特別入院基本料から構成され、「注1」の入院料については、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして届け出た療養病棟に入院している患者について、別に厚生労働大臣が定める区分(1日に2つ以上の区分に該当する場合には、該当するもののうち最も高い点数の区分)に従い、当該患者ごとに入院料A等の各区分の所定点数を算定し、「注2」の特別入院基本料については、届け出た療養病棟に入院している患者について算定する。ただし、「注1」の入院料を算定している場合において、患者の急性増悪により、同一の保険医療機関の一般病棟へ転棟する場合にはその前日を1日目として3日前までの間、別の保険医療機関の一般病棟へ転院する場合にはその当日を1日目として3日前までの間は、その日ごとに入院料Iを算定することができる。
(2) 当該保険医療機関において複数の療養病棟がある場合には、当該病棟のうち、回復期リハビリテーション病棟入院料等の特定入院料(病棟単位で行うものに限る。)を算定する病棟以外の病棟については、「注1」の入院料又は「注2」の特別入院基本料のいずれかを算定するものとする。
(3) 「注1」の入院料のうち、入院料Aから入院料Fまでのいずれかの算定に当たっては、定期的(少なくとも月に1回)に患者又はその家族等に対して、当該患者の病状や治療内容等の入院療養の状況及び各区分への該当状況について、別紙様式2又はこれに準ずる様式により作成した書面又はその写しを交付のうえ十分な説明を行うとともに診療録に添付すること。また、やむを得ない理由により説明を行うことが困難な場合であっても、患者又はその家族等の求めに応じ、当該書面又はその写しを交付するとともに診療録に添付すること。なお、患者又はその家族等への説明に当たり、特に悪性腫瘍等の患者に対しては、患者本人の治療方針に関する理解状況を踏まえ、療養上著しく不適切なことが生じないよう配慮すること。
「注1」ただし書の療養病棟入院料1又は2を算定する病棟に入院する中心静脈栄養を実施している状態にある患者については、当該病棟において摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制が確保されているものと認められない場合には、それぞれ1又は2の入院料A、B又はCの算定に代えて入院料D、E又はFを算定する。
なお、令和4年3月31日において現に療養病棟入院料1又は2に係る届出を行っている保険医療機関については、令和4年9月30日までの間に限り、摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制が確保されているものとみなす。また、令和4年3月31日において現に療養病棟入院料1又は2を算定している患者であって、医療区分3のうち「中心静脈注射を実施している状態」に該当しているものについては、当該患者が入院している病棟における摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制の確保の状況にかかわらず、当該状態が継続している間に限り、医療区分3に該当する場合の点数を算定できる。
(4) 基本診療料の施設基準等別表第五に掲げる画像診断及び処置並びにこれらに伴い使用する薬剤、特定保険医療材料又は区分番号「J201」酸素加算の費用並びに浣腸、注腸、吸入等基本診療料に含まれるものとされている簡単な処置及びこれに伴い使用する薬剤又は特定保険医療材料の費用については療養病棟入院基本料に含まれる。なお、療養病棟入院基本料を算定する日に使用するものとされた投薬に係る薬剤料は、療養病棟入院基本料に含まれているものであるため別に算定できない。ただし、「注1」のただし書の規定により、入院料Iを算定する場合については、この限りではない。
(5) 療養病棟入院基本料を算定する病棟は主として長期にわたり療養の必要な患者が入院する施設であり、医療上特に必要がある場合に限り他の病棟への患者の移動は認められるが、その医療上の必要性について診療報酬明細書の摘要欄に詳細に記載する。なお、「注1」のただし書の規定により入院料Iを算定した場合においても、その医療上の必要性について診療報酬明細書の摘要欄に詳細に記載する。
(6) 療養病棟入院基本料を算定するに当たっては、次の点に留意する。
ア 定期的(少なくとも月に1回)に患者の状態の評価及び入院療養の計画を見直し、その要点を診療録に記載する。なお、入院時と退院時のADLの程度を診療録に記載する。
イ 患者の状態に著しい変化がみられた場合には、その都度、患者の状態を評価した上で、治療やケアを見直し、その要点を診療録等に記載する。
(7) 「注4」に規定する褥瘡対策加算1及び2は、ADL区分3の状態の患者について、「別紙様式46」の「褥瘡対策に関する評価」を用いて褥瘡の状態を確認し、治療及びケアの内容を踏まえ毎日評価し、以下により算定すること。なお、以下において、「褥瘡対策に関する評価」における褥瘡の状態の評価項目のうち「深さ」の項目の点数は加えない当該患者のDESIGN-R2020の合計点数を「DESIGN-R2020の合計点」といい、暦月内におけるDESIGN-R2020の合計点が最も低かった日の点数を当該月における「実績点」という。また、褥瘡の状態の評価の結果を別添1の2の別紙様式2の「医療区分・ADL区分等に係る評価票」の所定欄に記載し、治療及び看護の計画を見直した場合には、その内容を診療録等に記載すること。なお、特別入院基本料等を算定する場合は、当該加算は算定できない。
ア 褥瘡対策加算1については、入院後若しくは新たに当該加算に係る評価を始めて暦月で3月を超えない間又は褥瘡対策加算2を算定する日以外の日において算定する。
イ 褥瘡対策加算2については、直近2月の実績点が2月連続して前月の実績点を上回った場合であって、DESIGN-R2020の合計点が前月の実績点より上回った日に算定する。
(8) 「注5」に規定する重症児(者)受入連携加算は、集中治療を経た新生児等を急性期の医療機関から受け入れ、病態の安定化のために密度の高い医療を提供することを評価したものであり、入院前の医療機関において区分番号「A246」入退院支援加算3が算定された患者を、療養病棟で受け入れた場合に入院初日に算定する。なお、ここでいう入院初日とは、第2部通則5に規定する起算日のことをいい、入院期間が通算される再入院の初日は算定できない。なお、特別入院基本料等を算定する場合は、当該加算は算定できない。
(9) 「注6」に規定する急性期患者支援療養病床初期加算は、急性期医療の後方病床を確保し、在宅患者支援療養病床初期加算は在宅患者や介護保険施設入所者等の状態が軽度悪化した際に入院医療を提供できる病床を確保することにより、急性期医療及び在宅での療養を支えることを目的として、療養病棟が有する以下のような機能を評価したものであり、転院、入院又は転棟した日から起算して14日を限度に算定できる。また、特別入院基本料等を算定する場合は、当該加算は算定できない。
ア 急性期患者支援療養病床初期加算については、急性期医療を担う病院の一般病棟に入院し、急性期治療を終えて一定程度状態が安定した患者を、速やかに療養病棟が受け入れることにより、急性期医療を担う病院の後方支援を評価するものである。急性期医療を担う病院の一般病棟とは、具体的には、急性期一般入院基本料、7対1入院基本料若しくは10対1入院基本料(特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。)又は専門病院入院基本料に限る。)、地域一般入院基本料又は13対1入院基本料(専門病院入院基本料に限る。)を算定する病棟であること。ただし、地域一般入院基本料又は13対1入院基本料を算定する保険医療機関にあっては、区分番号「A205」救急医療管理加算の届出を行っている場合に限るものとする。また、一般病棟と療養病棟が同一の病院に併存する場合で、当該一般病棟から療養病棟に転棟した患者については、1回の転棟に限り算定できるものとする。
イ 在宅患者支援療養病床初期加算については、介護保険施設、居住系施設等又は自宅で療養を継続している患者が、軽微な発熱や下痢等の症状を来したために入院医療を要する状態になった際に、療養病棟が速やかに当該患者を受け入れる体制を有していること及び厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、入院時に治療方針に関する患者又はその家族等の意思決定に対する支援を行うことにより、自宅や介護保険施設等における療養の継続に係る後方支援を評価するものである。なお、当該加算を算定する療養病棟を有する病院に介護保険施設等が併設されている場合は、当該併設介護保険施設等から受け入れた患者については算定できないものとする。
(10) 療養病棟入院基本料を算定する病棟(「注11」を算定する病棟を含む。)については、「注7」に掲げる入院基本料等加算について、それぞれの算定要件を満たす場合に算定できる。
(11) 「注8」の規定は、新型インフルエンザ等感染症がまん延している期間として別に厚生労働大臣が指定する期間において、療養病棟入院基本料の届出を行っている病棟においても、新型インフルエンザ等感染症等の患者が当該病棟に入院した場合には、届出を行った上で、一般病棟入院基本料の例により算定することができるようにしたものであること。
(12) 「注8」の規定により新型インフルエンザ感染症等の患者を入院させる際には、院内感染防止対策を十分に行うこと。
(13) 「注8」の規定により、区分番号「A100」の一般病棟入院基本料の例により算定する場合の費用の請求については、当該保険医療機関に入院した日を入院初日として、以下のとおりとする。
ア 区分番号「A100」一般病棟入院基本料の「注4」に規定する重症児(者)受入連携加算は算定することができない。
イ 区分番号「A100」一般病棟入院基本料の「注5」に規定する救急・在宅等支援病床初期加算は算定することができない。
ウ 区分番号「A100」一般病棟入院基本料の「注10」に規定する加算について、当該病棟において各加算の要件を満たしている場合には算定できる。
エ 区分番号「A100」一般病棟入院基本料の「注12」に規定するADL維持向上等体制加算は算定することができない。
(14) 「注9」に規定する慢性維持透析管理加算は、療養病棟における透析患者の診療を評価したものであり、自院で人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜灌流又は血漿交換療法を行っている場合に算定する。なお、これらの項目については、継続的に適切に行われていれば、毎日行われている必要はない。なお、特別入院基本料等を算定する場合は、当該加算は算定できない。
(15) 「注10」に規定する在宅復帰機能強化加算は、在宅復帰機能の高い病棟を評価したものである。なお、特別入院基本料等を算定する場合は、当該加算は算定できない。
(16) 「注11」の規定により、療養病棟入院料2を算定する病棟に入院する患者について、入院料D、E又はFを算定する場合であって、心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料又は呼吸器リハビリテーション料を算定する場合に、機能的自立度評価法(Functional Independence Measure)(以下「FIM」という。)の測定を行っていないときには、それぞれ入院料G、H又はIの所定点数の100分の75に相当する点数を算定する。
(17) 「注11」について、当該病棟に入院している患者であって、心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料又は呼吸器リハビリテーション料を算定する患者に対して、1月に1回以上、FIMの測定を行っていない場合は、入院中の患者に対する心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料又は呼吸器リハビリテーション料について、一日につき2単位を超えるものは、当該入院基本料に含まれるものとする。
(18) 「注11」に規定するFIMの測定に係る取扱いについては、以下のとおりとする。なお、令和4年3月31日において現に療養病棟入院基本料に係る届出を行っている保険医療機関については、令和4年9月30日までの間に限り、FIMの測定を行っているものとみなすものであること。
ア 前月までの6か月間に当該医療機関の療養病棟から退棟した患者(イ及びエの規定によって計算対象から除外する患者を除く。)について、以下の①の総和を②の総和で除したもの(以下「療養病棟リハビリテーション実績指数」という。)を各年度4月、7月、10月及び1月において算出していること。
① 退棟時のFIM運動項目の得点から、入棟時のFIM運動項目の得点を控除したもの。
② 各患者の入棟から退棟までの日数を、回復期リハビリテーション病棟入院料「注1」に規定する厚生労働大臣が定める日数の上限のうち当該患者の入棟時の状態に応じたもので除したもの(回復期リハビリテーションを要する状態に該当しない患者については、180日で除すること。)
[計算例]
① 前月までの6か月間に50人退棟し、入棟時にFIM運動項目が50点、退棟時に80点だったものが30人、入棟時にFIM運動項目が40点、退棟時に65点だったものが20人とすると、(80-50)×30+(65-40)×20=1,400
② 前月までの6か月間に50人退棟し、そのうち30人が大腿骨骨折手術後(回復期リハビリテーション病棟入院料における算定日数上限が90日)で実際には72日で退棟、残り20人が脳卒中(回復期リハビリテーション病棟入院料における算定日数上限が150日)で実際には135日で退棟したとすると、(72/90)×30+(135/150)×20=42
従って、この例では療養病棟リハビリテーション実績指数は①/②=33.3となる。
イ 在棟中に一度も疾患別リハビリテーション料を算定しなかった患者及び在棟中に死亡した患者は療養病等リハビリテーション実績指数の算出対象から除外する。また、入棟日において次に該当する患者については、当該月の入棟患者数の100分の30を超えない範囲で、リハビリテーション実績指数の算出対象から除外できる。
① FIM運動項目の得点が20点以下のもの
② FIM運動項目の得点が76点以上のもの
③ FIM認知項目の得点が24点以下のもの
④ 年齢が80歳以上のもの
ウ イの除外の判断に当たっては、除外した患者の氏名と除外の理由を一覧性のある台帳に順に記入するとともに、当該患者の入棟月の診療報酬明細書の摘要欄に、療養病棟リハビリテーション実績指数の算出から除外する旨とその理由を記載する。
エ 在棟中にFIM運動項目の得点が1週間で10点以上低下したものについては、療養リハビリテーション実績指数の算出においては、当該低下の直前の時点をもって退棟したものとみなすことができる。
オ 各年度4月、7月、10月及び1月においてア及びイで算出した内容等について、毎年7月に別紙様式53を用いて地方厚生(支)局長に報告すること。
(19) 「注12」に規定する夜間看護加算及び看護補助体制充実加算は、療養生活の支援が必要な患者が多い病棟において、看護要員の手厚い夜間配置を評価したものであり、当該病棟における看護に当たって、次に掲げる身体的拘束を最小化する取組を実施した上で算定する。
ア 入院患者に対し、日頃より身体的拘束を必要としない状態となるよう環境を整える。
イ 身体的拘束を実施するかどうかは、職員個々の判断ではなく、当該患者に関わる医師、看護師等、当該患者に関わる複数の職員で検討する。
ウ やむを得ず身体的拘束を実施する場合であっても、当該患者の生命及び身体の保護に重点を置いた行動の制限であり、代替の方法が見いだされるまでの間のやむを得ない対応として行われるものであることから、可及的速やかに解除するよう努める。
エ 身体的拘束を実施するに当たっては、次の対応を行う。
(イ) 実施の必要性等のアセスメント
(ロ) 患者家族への説明と同意
(ハ) 身体的拘束の具体的行為や実施時間等の記録
(ニ) 二次的な身体障害の予防
(ホ) 身体的拘束の解除に向けた検討
オ 身体的拘束を実施した場合は、解除に向けた検討を少なくとも1日に1度は行う。なお、身体的拘束を実施することを避けるために、ウ及びエの対応をとらず家族等に対し付添いを強要することがあってはならない。
(20) 「注12」に規定する夜間看護加算及び看護補助体制充実加算を算定する各病棟における夜勤を行う看護要員の数は、「基本診療料の施設基準等」の第五の三の⑴イ①に定める夜間の看護職員の最小必要数を超えた看護職員1人を含む看護要員3人以上でなければ算定できない。なお、「注11」の規定により入院料を算定する場合及び特別入院基本料等を算定する場合は、当該加算は算定できない。